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動機は自分の中にある。新潟を愛する本屋さんの、今までとこれからの軌跡(2/2)



「動機は自分の中にある。新潟を愛する本屋さんの、今までとこれからの軌跡(1/2)」はこちら





✒︎自分のためにやるということ


ーそだたべさん、ポッドキャストでラジオ番組もやっていますよね。あれも本屋さんとしての一つの形なんじゃないかと思いました。



そだたべ:そうですね。本屋に関しては社会的な意義というか、皆さんのためというのも少しありますが、ラジオに関してはほんと自分のためにやってます。


何が自分のためかというと、ラジオに出演された方も気分上々になって欲しいんですけど、自分が気分上々になりたいんですよ。

自分の気持ちが上がらなければ、周りの人のことを上げることもできないし。


その中で私が何をしたいかというと、自分が面白いなとか楽しいなとか尊敬できる人と喋りたいんです。


喋りたい人と喋るきっかけとして「ラジオをやっているのでちょっと喋ってくださいませんか、本を紹介してくださいませんか」と言って、本を紹介するという建前を置いているんです。自分が楽しむためなんですね。

でも、自分が楽しくないと聴いてる人にも伝わらないですし。

だからラジオは自分の夢というか、喋りたい人と喋るために使っています。



ーなるほど。そうなんですね。そだたべさんがラジオを楽しんで作ってらっしゃるのはとてもよく伝わってきます。

私のこのインタビューも、自分がやりたいからなんですよね。自分が楽しいから、自分が読みたいからやっているんです。動機は自分という。

ところで、ラジオの中でそだたべさんの気になる発言がありまして。「本から人生を助けてもらった」とおっしゃっていましたよね。



そだたべ:本に助けてもらった方というのは結構いらっしゃると思うんですよね。

小中高と学生時代、だんだん人間付き合いが嫌になってきたんですね。
なんでかと言うと、過度に人の目を気にする性格というか、自分で言うのもなんですが優等生だったんです。皆に頼られる学級委員長みたいな。
それは人から嫌われたくなくてやってた行動で、それがだんだん重荷になってきちゃって。

大学に進学した時に、人と付き合うのが嫌になったんですね。大学の自由さもあって。
喋りたくないし、気を使うのも嫌だし。それでもうひきこもりとまでは行きませんがそれに近い状態になって。

そのときに、あることがきっかけで本を読むようになったんです。
実は私それまで本を読んだことがなかったんですよ。


ーえっ、そうなんですか?


そだたべ:そうです。読んでたのはジャンプ、マガジンとかのマンガ雑誌。高校の時はスピリッツを毎週電車で読んでました。

話はさかのぼりますが、高校生の時に『ジュラシック・パーク』という映画が大ヒットして、仲間内で試験期間中の部活がないときに観に行こうという話になったんですね。

当時、色々な事情でほとんど小遣いをもらってなかったんです。
映画を観に行くとなると、映画プラス食事、カラオケで5000円くらいなくなってしまう。でもお金がないというのは言えなくて、「俺観たからいいよ」と話した。
そしたらその中のグループの1人がどんなだったか教えてみろと言ってきたので、「いや、皆観てないから、観たあと感想教えるよ」と言ったんです。

実際私は観てないわけで、感想を聞かれたときにどうしようと思っていたら、古本屋さんで『ジュラシック・パーク』の上下巻の小説が500円で売っていたのを見つけたんです。それを買って読んだんですよ。初めて文字だけの本を読みましたね。
試験勉強そっちのけで読んだんですが、それまで小説を読んだことがなかったものだから文字からイメージできなくて、図書館に行って恐竜の百科事典を借りてきたりして頭に叩き込みました。
それで話の内容を友達に話したら、私の方が詳しく知ってるんですよね。それですげーなと丸く収まったということがあったんです。

(『ジュラシック・パーク上・下』マイクル・クライトン  酒井昭伸・訳  早川書房 amazonより)


そだたべ:大学でひきこもりになったときに、1日中テレビをずっと見てたんです。ぼーっと。
ある時に金曜ロードショーだったかな、『ジュラシック・パーク』をやっていて。あー、高校の時は観れなかったけどテレビで観れるなと思って観たら、好きな人には申し訳ないんですが、すごいつまらなかったんですよ。

その時に、自分の頭の方が勝ってると思ったんです。勝ってるというか、小説を読んで想像した方が面白かった。本はすごいなあと思って。
それでそこから本をすごい読み始めたんです。

それが2年くらい続いて、あらゆる本を読んだんですね。面白いと言われているものや、題名を聞いたことがあるなというもの。
その中で色々な人の考えに触れるじゃないですか。生き方や、考え方や、その作者の思いが伝わってくる。
同じようなことを考えている人間もいるんだとか、自分よりももっとひどい人がいてこんな方法で生きているんだとか、駄目になってしまうこともあるんだとか。

そこで人と接するというか、唯一社会と繋がった。そこからだんだん自分の心の中を咀嚼できるようになって、バイトに行き出したりとか大学にちゃんと行くようになりました。


ー本を介してあらゆる人間に出会ったということなんですね。


そだたべ:そうですね。おかげで社会復帰ができました。


ーきっと誰しもがオブラートに包まないと言えない話を持っているんでしょうね。本はそういうものが文章という体裁を保ちながらわりと赤裸々に書かれているので、人の奥深いところに触れることができる。



そだたべ:私小説とかはすごい内面掘り下げてますもんね。こんなこと考えてるんだみたいな。

でも、自分も言葉にはできなかったけれど同じだということに気付いたりする。

語彙力がなくて表現できないけど、このもやもやとか今の立場とかを文字で綴るのであればこれなんだなという本にいっぱい出会いました。


でも、正直言うと、私は必ずしも本を読まなくてもいいと思っています。読みたければ読めばいいし、読まなくてもそれはそれで良くて。

なんだろうな、子供たちには人と喋ってほしいですね。

ほかにも、大学生の時の私のように人付き合いがなくなった人が、本を介して人と喋るといいんじゃないかなと。


本を媒介にして、その向こう側にいる人、作者であったり編集者であったり装幀を作った方だったり、そういう方の思いを本を通して感じ取ってほしい。

本を飛び越して人と喋って、自分の人生を気分良く過ごしてもらえるならそれでいいと思うんですよね。


皆が本を読まなくても必要な人が読めばいいと思います。そういう選択肢を残しておくというのは重要ですけど。


本屋だから、「どういう思いで本屋をやっていますか?」とよく聞かれるんですけど、正直な気持ちはそうです。

特に昔話の民話とかすごくいいと思いますよ。おじいちゃんおばあちゃんから話を聞いて。それもある意味本みたいなものですよね。

尊敬している先輩の近くに行って話を聞いて自分のものにするとか。それでいいと思うんですよね。



ーこれからやりたいことはありますか



そだたべ:一番やりたいのは出版ですね。社を立ち上げてやりたいです。本を作る側。作って自分で売ること。


皆さん読書をする時間は減っていると思うんですけど、自分の時に比べると、文字を読んだり書いたりする時間は圧倒的に増えていると思うんですよ。SNSが発達しましたし。

作る側に回ることを手助けしたいんですね。出版するとか、自分で物語を綴ったり、自分の思いや体験を、本やネット上やラジオに乗せるそういう場を、もっと気軽にするのも面白いんじゃないかなと。

発信すれば逆に人のものも読みたくなりますし。



ーたしかに皆文章自体はとても読んでいますよね。



そだたべ:書くことも多くなってますよね。


あと、できれば絵本もやりたいですね。30年は読み継がれるものを作りたいなと思っていて。

編集もやって、出版もやって。誰かを繋げるみたいな感じでしょうか。企画してプロデュースして。


あとは図書館もやりたいですね。個人図書館。

ただの図書館じゃなくて既存の図書館さんができないようなことをやれる、図書館とプラス何かを掛け合わせたものとか。


とにかく、やりたいことがいっぱいあるんです。





「CoCoLo西N +」の書棚作りをしていたそだたべさんは、本当に楽しそうでした。
大量の本を前に「大変ですね」と言ったら、「楽しいですよ!」とハイテンションな返事が返ってきたことをよく覚えています。

何かを好きで、それに没頭する姿は、人の心を動かします。

多くの人が、やりたいことを胸に秘めたまま日々を懸命に生きています。
もしかしたら、やりたいことを心の奥底に大事にしまったまま忘れてしまっている人もいるかもしれません。
とにかく一歩を踏み出すこと。言葉にし、行動して形にしていくこと。
そだたべさんからは、自分の中に抱いた「やりたい」を実現させていこうという力強い姿勢が伝わってきました。

もしかしたら、そだたべさんは「そんないいもんじゃないですよ」と言うかもしれません。
でも、私はこんな思いで本に携わっている人が新潟にいますよと多くの方にお伝えしたいと思いました。

ぜひ、そだたべさんが選書された本棚を見てみて下さい。


✒︎そだたべBooks選書による販売所
◯ピカリ産直市場 お冨さん ピアBandai店
◯ぽんしゅ館新潟驛店
◯新潟駅CoCoLo西N +店

✒︎ポッドキャスト」ラジオ番組
「本✖︎人 読書会の時間ですよ~」



インタビュー日:5月27日(日) 場所:新潟県立図書館

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